【竹から作られた衣服の現実②】

前回の投稿で、「カンボジアのような環境保護の法整備が整っていない国では、環境汚染の元凶のひとつとなっています」とお伝えしました。

竹レーヨンの工場がカンボジアのどこにあるのか探したのですが、まったく見つかりません。カンボジア製ということだったのですが、どうやら産地が異なるようです。

インターネットで調べてみると、公的な機関としてアメリカ連邦取引委員会がヒットします。同委員会による2013年1月のリリースでは、「(アマゾン、バーニーズ・ニューヨーク、ウォルマートなど)78の小売り企業に対して、間違った広告をしたり、ラベルの表記すると、一件に付き、$16.000ドルの制裁金を課す」というものです。現在、連邦取引委員会と小売り企業の間で訴訟になっています。”Bamboozling ”(だます、あざむく)という表現を使い、消費者保護という立場から、かなり強い警告を販売側の企業に対して行っています。

なぜ、そこまで強い警告になったかというと、竹由来のレーヨンが、「環境負荷が低い」というわけではないということです。「竹は無農薬で育つが、そのメリットは、製造過程の有害化学物質の使用によって、ことごとく帳消しとなって余りある」というのが、その根拠です。

さらに、問題視されているのが、竹レーヨンで作られた製品は、植物としての竹が持つ「抗菌作用」「消臭作用」など数々のメリットを挙げていることです。「乳幼児に良い」「アトピー疾患に効果がある」といったイメージを想起させるものも、連邦取引委員会の警告の対象となっています。

前回の投稿を読んでくださった方々から、竹レーヨンは「ビスコース原料のレーヨンです」とご教示をいただきました。その通りであって、竹レーヨンは、単なるレーヨンです。竹レーヨンは、従来のレーヨンとまったく同じ組成でできあがっています。

かなり調べたのですが、この竹レーヨンを製造しているのは、中国企業がほとんどのようです。なるほど、カンボジアに工場がないわけです。中国語のサイトも調べたのですが、どの企業も「私たちの工場は中国で一番大きい」、「最初に操業を始めた」「最も優秀な竹レーヨンを製造できる」と記載しているので混乱しましたが、上海を拠点に竹レーヨンの製造を始めた企業が、最初に操業して最も大きな竹レーヨンの会社のようです。

日本や欧州でも、多くの竹レーヨン製品が、環境負荷が低く、竹の持つ効能がそのまま製品に取り込んだものとして販売されています。これについてアメリカ連邦取引委員会は、「日本や欧州の消費者は、存在しないものを購入している」と答えています。何が問題なのか、直接、担当者に聞いてみることにします。

またカンボジアコットンに関心を持ってくれたアメリカ西海岸の環境保護に熱心なアウトドア用品メーカーも、竹レーヨンに対して厳しい指摘をしています。僕が一度、訪問したことがある企業なので、同社の素材開発チーム内の科学者たちの間で、どのような議論があったのかをたずねてみることにします。

(続く)

10月 20, 2014 8:02:32AM