※農薬混入事件で使用されたマラチオン(マラソン)も、オーガニック認証農薬に含まれています。有機リン・有機硫黄系殺虫剤です。世界で最も多い12,600トンが使われ、売上高は168億円以上になります。
オーガニックコットンは、その認証機関が認めた殺虫剤を使ってもよいことになっています。
インターネット上でウェブサイトを閲覧していると「オーガニックコットンとは、殺虫剤や除草剤、化学肥料などを使わず、有機肥料を用い、昔ながらの栽培方法で育てたコットンです」という定義をよく見かけます。
世界で最も権威があり厳しい基準を設けている認証団体では、100以上の殺虫剤の使用を認めています。農薬混入事件で話題になったマラチオンも含まれています。
コットンの生産国で使用が禁止された殺虫剤は、もちろん認められていないはずです。しかし、アメリカとオーストラリアを除いては、コットンを生産する国は貧困に苦しむ国が多いのが実情です。カンボジアでも違法農薬の流通が常に問題となっています。インドでは、オーガニックの畑と通常のコットンの畑が隣接していることが珍しくありませんでした。噴霧(スプレー)された農薬は、風に乗って運ばれてきます。オーガニックか通常コットンかを区別することは、まず不可能だと思います。
殺虫剤の代わりに「益虫」である昆虫を放つという記述もあります。コットンをエサとする昆虫を捕食するテントウムシなどを「益虫」として大量に飼育し、それらを一斉に畑に放てば、生態系に大きなダメージを与えます。コットン畑というのは、地平線の向こうまで続く広大な畑であることが多いです。実際に、放たれたテントウムシが増えすぎて家の隅々にまで入り込み、「益虫」から「害虫」扱いされた例がアメリカでありました。
割高なオーガニックコットンを購入する消費者は、メリットを享受する受益者であることが強調されます。「デリケートな口、耳、目などには優しいオーガニックコットンでケアしてあげてください」「赤ちゃんにも安全安心の素材」「枯葉剤や機械で強制的に収穫していないので夏は涼しく冬は暖かい」など数々の消費者向けメリットをうたった言葉が訴求力のある写真と共に並んでいます。
今回は、「夏は涼しく冬は暖かい」について説明します。コットンの繊維を断面図にすると、ルーメン(LUMEN)と呼ばれる細長い空間があることがわかります。オーガニックコットンは、枯葉剤や機械で強制的に収穫されていないので、ルーメン(LUMEN)がきれいに残り、熱伝導率が低いから「夏は涼しく冬は暖かい」というのがその理由です。
オーガニックコットンの表示ルールについては、独立行政法人中小企業基盤整備機構がまとめたまとめた報告書があります。そこには、「オーガニックコットンも通常のコットンも科学的な検証による繊維としての差はない」と結論づけています。
「夏は涼しく冬は暖かい」は、これで根拠がないことがわかりました。オーガニックコットンの他の「セールストーク」は、どういった根拠があるのでしょうか?
(続く)