1970年から2050年までの間に、生息環境の変化という理由だけで、すべての植物のうち10%から15%が失われると、イギリスの王立植物園で進められているミレニアムシードバンクは予測しています。
種は、途方もない時間をかけた進化の過程において、それぞれが奇跡のバランスで存在しています。そして、その土地の風土に適応した在来種ができあがっていきました。
いま、在来種は急速に失われています。背景には、表現に誇張なく、グローバル企業による種子の支配が進んでいるからです。
世界最大の種子企業モンサント社は、1993年以前には、種子にはそれほど関わっていなかったいませんでした。ラウンドアップ(非選択性除草剤=すべての植物を枯らす効果がある)の販売が主な業態でした。ベトナム戦争の枯れ葉剤(エージェントオレンジ)を生産していた企業ですから、農薬の生産を続けていただけです。
大きな転機が1993年に訪れます。モンサント社は、ラウンドアップを散布しても枯れない遺伝子組み換え大豆の開発に成功したのです。
モンサント社は、この遺伝子組み換え種子は知的財産だとして、この大豆の特許をアメリカで取得します。そして2年後、WTO(自由貿易促進を主たる目的として創設された国際機関。常設事務局はスイスのジュネーブ)は、アメリカの知的財産保護とほぼ同じ法律を、世界中で適用できるように定めました。
組み替えた遺伝子の追跡は技術的に可能です。そのことは、モンサントが、自社が特許が取得した遺伝子が含まれている種子について、自社の知的財産の権利が世界中に及ぶことを可能にしました。
企業による種子の支配は、ここから始まりました。
(続く)