東北コットンプロジェクトに参加する大手量販店から、小売り製品において、東北コットンが含まれている”混率”についてお返事をいただきました。回答をいただけるまで一週間ほど時間がかかりました。
結論から書くと、東北コットンプロジェクトというのは、企業が製品を販売するための販売促進ツールだと思います。
混率というのは、製品において、どれくらいの東北コットンが含まれているかを示す割合です。東北コットンの紡績を担当する法人に問い合わせたところ、混率は、最大2%から3%です。
東北コットンプロジェクトに参加する大手量販店の環境担当の方からいただいたメールには、下記のように記されていました。
”東北コットンプロジェクトに関し、○○社では、2013年6月に限定店舗で「コットン半袖Tシャツ」「コットンタオルハンカチ」の2アイテムを販売しました。収穫されたコットンを参加する各社で分配し、弊社で企画した上記の商品で使用した混率は5%でした”
”被災された方への還元は、既に商品単価に含まれております。東北コットンPJ事務局にて他社様も含めて、まとめて被災された方へ還元される仕組みとなっています”
僕がまず「?」と思ったのは、この大手量販店の製品における東北コットンの”混率が5%”ということです。東北コットンプロジェクトにおいて紡績を担当する唯一の法人では「糸に占める東北コットンの混率は、2%から3%」と回答をいただきました。なぜ、紡績会社の混率を超えた商品の製造が可能なのでしょうか?
混率が低いのは「貴重な東北コットンを多くの消費者に使っていただきたい」という理由だそうです。そのため、製品を製造する過程で不足するコットンは、アメリカなど海外のオーガニックコットンを使用して補っているということでした。
これはどういうことかというと、東北コットンプロジェクトの1.6ヘクタールの綿畑から収穫できる綿は、極めてわずかです。極少量ずつ各企業に分配して、東北支援という物語を使い、各企業がより多くの製品を販売したいということです。自社の利益を最大化したいと言うことに他なりません。
話を戻します。大手量販店のTシャツにおける東北コットンについての混率は、ホームページ上では明らかにされていませんでした。電話でも回答していただけなかったため、文書で質問をした次第です。
この大手量販店の東北コットン混率5%というのは、(他の企業がそうしているように)堂々とホームページで公表してもよいほどの高い混率です。参加企業の中には、東北コットンの混率が1.4%と公開している企業もあるからです。(混率が低すぎて、計測不能という商品もあるそうです)
紡績を独占して担当する法人が、東北コットンプロジェクトにおける混率は、2%から3%と公表しています。この大手量販店の商品は、なぜ、混率が5%なのでしょうか?
他の紡績会社に特別に糸にしてもらっているということでしょうか?商流(仕事の役割分担)の組み立てから考えると、それはあり得ない話です。
流通業界で使用される用語に、偽和(ぎわ)という単語があります。要するに水増しです。オーガニックコットンや産地限定のコットンの生産量に比べて、小売り製品に占める繊維量が数倍になっていることを指します。繊維、アパレル業界では、暗黙の了解事項と言って良いでしょう。
この大手量販店の東北コットンの価格についてです。2014年の東北コットンプロジェクトの商品化についてです。
商品:東北コットン支援プロジェクト ○○○ストール3種
売価(予定):7,900円
2014年の上記の商品で使用した混率は5%になります。
この量販店の東北コットンを極わずかに使用したTシャツの小売価格は、4.980円です。
Tシャツについては、混率を教えていただけませんでした。このTシャツも価格は4,980円なので、高級品と言えます。
タオルハンカチは、525円です。タオルは、縦糸、緯糸、パイルという3本の糸を使うので、さらに混率は低くすることができます。
これらの商品の売り上げから、東北の被災地への売り上げからの還元(お金を寄付すること)する予定はないそうです。
その理由は「被災された方への還元は、既に商品単価に含まれております。東北コットンPJ事務局にて他社様も含めて、まとめて被災された方へ還元される仕組みとなっています」と環境担当の方からメールで回答をいただきました。
この大手量販店が説明する還元とは、「被災した農家(ふたつの農業団体)から、3倍の価格で原綿(原料となるコットンボール)を買い付けるのみです。経済産業省から4,700万円の税金を補助してもらい、肝心の東北の被災者(ふたつの農業団体)から買い上げるコットンの金額が、世界で流通するコットンの3倍程度の価格というのは残念です。
通常のコットンの価格というのは、インドやパキスタン、アフリカの最貧国、旧ソ連のウズベキスタンなどが生産するもので非常に低価格であり、種付きの原綿(コットンボール)にして、1キロ=0.5ドル程度と安価です。
また、この大手量販店は、東北コットンについての問い合わせに対して「衣料品について製品のほぼ95%が、海外で製造(原料調達から縫製に至るまで)」と2011年に消費者からの問い合わせに回答しています。
東北の被災地で縫製や梱包、発送をしているなら、被災地での雇用創出という側面がありますが、この大手量販店では、そのような取り組みはしていません。
東北コットンの製品発表会を行うたびに、マスメディアが広告宣伝してくれるというメリットがあるわけですから、企業ブランディングを高める上でも、東北コットンプロジェクトに参加することは、企業にとって十分メリットがあるのです。
未曾有の災害に見舞われた東北の被災地支援が販売促進ツールとなることに憤りを感じます。
(続く)