僕は、自分でコットンを栽培するまで、遺伝子組み換え種子はもちろん、FI種についても、NHKとテレビ朝日で報道番組を制作していたのに、ほぼまったく知りませんでした。F1種のコットンの種を買って、それを植えて、その後の種を翌年に植えたら、発芽しなかったり、極端に収穫量が落ちたり、繊維の長さが短かったり、その他にもよくよく観察すると一代目のコットンボールを二代目のコットンボールには著しい差があることがわかりました。その時に、恥ずかしながら初めてF1種の存在を知ったわけです。
遺伝子組み換えについては、「食べても大丈夫なのかな?」程度のことしか考えていませんでした。これもよく調べてみると、もうとっくにたくさん食べていました。アメリカ出張の時だからというわけではなく、日本にも加工品の形でたくさん輸入されているからです。どんな表記になっているのか知りたくて、一時期は小売店や厚労省や食品企業のホームページを片っ端から読んでいました。
遺伝子組み換え食品については、大規模な疫学的調査はありません。長期間にわたってどうなのか? 子どもを持った時はどうなのか?という問いもありますが、そのあたりは論争中のようです。そうした健康問題とは別に、モンサント社によって、不可解なプロジェクトが進んでいます。
そのひとつが、モンサント社とアメリカの巨大財団が進めている「ノアの方舟」と呼ばれるプロジェクトです。その目的は、毎年、在来種(固定種・原種)は急速に消滅している。プロジェクトの目的は、「私たちは、毎日のように作物生物の多様性を失いつつあるので、将来の農業のため、そして気候変動や伝染病などの危機から人類を守るために、あらゆる環境に適用する種子を保存する必要がある。あらゆる危機に対応して生き残る種子を集めた安全な金庫が必要だ」ということです。北極圏の氷河の下に建設されています。零下18度か20度で保存しておけば、理論上は1000年でも2000年でも保存ができるということで、少しずつ温度を上げて貯蔵庫から出せば、種は発芽するらしいです。
在来種を根絶やしにするようなビジネスモデルを世界中に広めながら、その一方でなぜ、在来種を大量に保管するプロジェクトを大量の資金を投じて進めているのでしょうか…。
モンサント社は、農業においてもっと重要な種を販売する市場占有率を世界トップレベルで増し続けています。モンサント社が販売しているF1種は、優秀な生産性を持っています。繰り返しになりますが、このF1種は、一代限りしか育ちません。つまり、永久に種を買い続けなければならなくなります。利益の得るには、次の一言で言い表せるのではないかと思います。「単価×数量×リピーター」。モンサント社の種は、バイオテクノロジーの先端技術を用いているので高額です。世界各地に販売する力を持っています。そして、その種子をずっと購入し続けなければなりません。利益をあげるには、モンサントの手法は、すべての条件を満たしています。
インド、ブラジル、メキシコなどに進出したモンサント社は、このF1種と交雑した品種にもモンサントの知的所有権が及ぶとしています。その論理で、零細農民に対しても、巨額費用のかかる訴訟を起こしてきました。農家は、泣き寝入りするしかありません。インドの綿農家の大量自殺は、このことも大きな原因となっています。
日本でも、種を販売する会社は、モンサント社や関係するアメリカの穀物メジャー商社が関与しています。
ここまでモンサント社という企業が巨大になると、当然、政治にも影響を与えます。
以前からモンサント社などバイオテクノロジー企業が、米国議会へ大口の寄付をしてきたこともあって 昨年3月、いわゆる「モンサント保護法」というものが、可決されました。
モンサント保護法を簡単に説明すると、「モンサントが販売した種が原因で、消費者が健康不良を訴えても、100%間違いない証拠が無い限り、政府はモンサント社など企業側に販売停止を命令出来ない」というものです。
長期にわたる疫学的調査や科学的な立証は、現実的には不可能なのです。そんなわけで、この法案は その後撤回を求める署名が25万人以上も寄せられ 成立後でも抗議活動は世界中で行われ、米国民の反発も強く、半年で撤回されました。
ロシアでは、遺伝子組み換え食品の全面禁止を検討しています。EUや中南米などでも同様の動きが出ています。作り出される生命である遺伝子組み換え種子への反発は世界規模に拡大中です。
日本では遺伝子組み換え作物の輸入承認は増える傾向にあります。現在 日本では下記の作物が認可済みです。
じゃがいも、大豆、てんさい、とうもろこし、なたね、わた、アルファルファ、パパイヤ
その他 遺伝子組み換え作物由来の添加物は下記が認可済みです。
α-アミラーゼ、キモシン、プルラナーゼ、リパーゼ、リボフラビン、グルコアミラーゼ α・グルコシルトランスファーゼ
(続く)